あなたなら1960年における発展途上国の内、どの国が20世紀末に大きなGDPの
成長を遂げると考えるだろうか?
2023年の今から考えれば既に答えが出ている問いであるので答えは明白であるかもしれない。
しかしこの賭けは、「2070年までにどの国が大きなGDPの成長を遂げると考えますか?」
という問いについて考えてみるときっと難しいかけであることは分かってもらえるだろう。
なぜ、韓国やタイ、今や中国は欧米との所得格差を縮小し始める一方で、バングラディシュ、パキスタン、中央アメリカやほとんどのサハラ以南アフリカの国々などが極貧に陥ったままなのだろうか?
世界では国際開発援助の動きが広がっており、政治的な問題が絡むこともあるが、上に貧困国の例として挙げた国々も規模の違いこそあれ、国際開発援助の対象となっている。
だけど貧困は今でも存在している。なぜだろうか?
経済学者の2派の対立
世界には何百人という学者が世界の経済開発に関する研究にフルタイムで従事しているが、多くは二つの主要意見のいずれかの陣営に属している。
①開発援助の規模が十分でない
②開発援助のやり方が間違っている
①開発援助の規模が十分でない
この陣営に立つ経済学者の一人にコロンビア大学地球研究所所長のジェフリー・サックスがいる。
ジェフリー・サックスの来歴については以下をどうぞ
ジェフリー・サックス – Wikipedia
彼は、「貧困の罠」があるという見方を提唱者した。
「貧困の罠」
「貧困の罠」は、貧困の状態にある者が独力で貧困から抜け出すのは難しいということを表している。特に貧困国となると、社会のインフラ自体が整っていないため、
個人で貧困から抜け出すことは不可能に近しい。
そこでジェフリー・サックスは、貧困国を「貧困の罠」の悪循環から引き出すには大きなショックが必要である。そのショックとは例えば、保健所の建設、学校の改築、道路や発電所などの整備。
ただしこれらの事業は非常に高価であるため、現在の開発援助の規模では「貧困の罠」から引き出せるほどの強いショックになっていない、と主張した。
②開発援助のやり方が間違っている
この陣営に立つ経済学者の一人にビル・イースタリ―がいる。彼は世界銀行の外国援助政策を公に酷評してそこから追放されて以降、ニューヨーク大学の教授になった。
ウィリアム・イースタリ―の来歴については以下をどうぞ
ウィリアムイースタリー-ウィキペディア (wikipedia.org)
彼は、数兆ドルの援助を投じることよりも重要なこととして、その援助資金の用途が対象国にとって貧困から脱するために適切に用いられているか(例えばどのようなインフラ設備を整備するべきなのか、もしくは政治腐敗による横領が起こっていないかなど)という懸念事項があるために、ただ援助資金を与えるだけでは、ただのばら撒きで終わってしまうことを主張し、援助資金に条件を付した。
その条件とは
①国の統治が良い
②「一般人」の利益になるように資金が使われているかを確認・監視する者をつける
そして援助資金は受領する諸国の制度が是正するまで、小規模な社会的起業家に資金供与することに
留めておくべきだと主張した。
「鶏が先か、卵が先か」
①は、「各国が暴力や腐敗に対処できると期待できる以前に、まずは各国を貧困から脱却させるべき」
②は、「各国が最初に腐敗に対処したとすれば、経済成長はおのずと高まってくる」
という考えに基づいている。つまり「鶏が先か、卵が先か」という状態なのだ。
両意見とも合理的であり、どちらが正解かということを決めることはできないし、どちらも妥当だと考えられる。しかし世界がいつまでたってもこの問いに明確な答えを出すことができていないのは現実問題として、
腐敗・暴力・貧困の因果関係問題が非常に複雑であるからだ。
腐敗・暴力・貧困の因果関係
なぜこれらの問題が複雑であるのだろうか。
それは目に見えにくい形でこれらの問題が起こっているからだ
腐敗による賄賂、横領は当然世間の見えないところで行われ、事実が発覚し調査が行われた場合でも多くの人がその内容について「口先だけの話」をするだろう。
また暴力が戦争や犯罪の形をとってあらわる場合にもの、戦争や犯罪に至るまでの社会上での問題は第三者的な立場に立って調査を行う物からは見えにくいものである場合が多い。
だから因果関係について考察しようとしても、そこで使うデータは信頼性を大きく欠いており、正しい結論を導き出すことができない
そこである経済学者がそれらの目に見えない問題を、様々なデータを様々な角度から解釈することで目に見える問題にしようと試みた。
コメント
こんにちは、これはコメントです。
コメントの承認、編集、削除を始めるにはダッシュボードの「コメント」画面にアクセスしてください。
コメントのアバターは「Gravatar」から取得されます。